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テレまめ

特撮コラム「怪獣役者」

棚を整理していたら、私の小学生の卒業文集がひょっこりと出てきて、急に懐かしくなってついつい読み始めてしまった。

その頃の将来の夢は「怪獣映画関係の仕事」。

……漠然としすぎてるぞ、俺よ。用は何でもよかったのだが、思い出してみるに、その中でも一番やりたかったのは「怪獣の中に入る人」だったはずだ。何故かははっきりしないが、多分、怪獣が街をぶち壊すという行為に何かしらの憧れを持っていたのだろう。だからって別に破壊願望を持っている訳ではないので誤解の無いように(笑)。

しかし、怪獣に一度入って演技をするのは実際楽ではない。

まず第一に、着ぐるみは重い。ゴジラ第一作の時の着ぐるみは、何と重さが100キロ。実はこれでも軽くなったほうで、試作版は150キロもあったために役者が中に入っても動けなかったのだ。現在では軽量化されてはいるのだが、それでも撮影が一通り終わると体重が3キロから4キロは減るそうだ。とにかく重労働なのである。

第二に、といってもこれも重要だが、暑い。そもそもスタジオ内が、照明の熱のおかげでクーラーも効かないほど暑くなっている。その上に着ぐるみである。真夏のアトラクションなんかはさぞかし大変なことだろう。

そしてさらに追い討ちをかけるような第三の要素。視界が無い。人間の目がそのまま怪獣の目になっていればいいが、そんなのは稀だ(大魔神は人間の目なので、その辺凄くリアルだったが)。大抵は怪獣の喉元にある、5、6箇所ほど開けられた小さな穴から覗くのだが、ここからでは外の様子がちょっと分かる程度なのだという。リハーサルで動きを覚えたうえで撮影に挑まなければならない。ただ街をぶっ壊したり戦ったりしているのでは撮影にならないのだ。まさに「怪獣役者」。

これくらい過酷な条件で、着ぐるみでの活動限界は30分がいいとこなのだが、場合によっては2時間ぐらい入ってなければいけない時もあったりする。死にますね、これは。

……まあ小学生当時の自分にそんな事実を知る由も無いが、つまりあの頃は、怪獣になりたかった、と心から願っていたのだろう。その怪獣への憧れが今になっても続いているわけで、この辺は忘れてないみたいだ。やっぱり怪獣はいいな。

しかしところ変われば撮影方法も変わる。アメリカで撮影された『ウルトラマンパワード』の着ぐるみは、なんとスーツ内に冷却用の水を送り込めるようになっていて長時間の撮影でも平気なのだそうだ。怪獣を演じるのにそんな楽していいのだろうか?『パワード』の怪獣たちは造形こそ良かったが、それ以外の部分では例え過酷でも根性で戦う日本の怪獣に負けていた。この事実こそ、怪獣役者達の根性が怪獣そのものに命を与えていることの証明になるのではなかろうか。

(文・荒馬大介)

※本記事はテレビる毎日公式メルマガ「週刊・テレビる毎日」のバックナンバーの中から、こざるが厳選した荒馬大介さんのコラムをブログ用に再編集したものです。掲載の年月日と号数は省略します。

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