12Feb
坂元裕二さんの脚本作品を強く意識したのは「Mother」が最初でしたが、やはりあの作品では芦田愛菜ちゃんの演技が強烈すぎて「マナ、おそろしい子…!」と白目になってしまうほどでしたので、坂本さんの実力に気がついていませんでした。
その後、「Woman」「それでも、生きてゆく」「最高の離婚」そして「カルテット」ときて、意識をメッタ刺しされるごとくに刺さってくる言葉に「坂元恐るべし!」を実感するようになりました。その坂元さんの新作であり、日テレ三部作完結編といえるのが「anone」です。
ハリカ(広瀬すず)には家族もなく家もない。特殊清掃のバイトをしながら、ネットカフェで寝泊りする生活。「ハズレ」というハンドルネームで、スマホのチャットアプリで「カノン」と名乗る少年との会話が唯一の楽しみだ。
ある日、ネカフェ仲間が海岸に大金が隠されているのを見つけ、探しに行くことに。金を見つけた仲間が突然裏切り、独り占めしようと逃走しようとした時、金を奪おうとする亜乃音(田中裕子)が現れる。
争奪戦の末、ハリカが金を手に逃げると、幼い頃に過ごした記憶の場所にたどり着く。祖母と過ごした楽しい思い出の場所だと思い込んでいたそこは、幼児虐待が行われていた更生施設だった。
封印された記憶がよみがえるハリカ。そしてカノンは、その施設で共に過ごした友達の彦星だった。現在は思い病気で入院している彦星のことを救いたいとハリカは願うようになる。
ざっくりと導入部のあらすじを書きましたが、ドラマ序盤から物語はさらに大きく動いてくることになります。
ハリカたちとは別サイドで始まる、舵(阿部サダヲ)とより子(小林聡美)の出会い。お互いに死に場所を探す二人がハリカたちと遭遇して大きく関わっていきます。そして、亜乃音の亡夫の従業員だった中世古(瑛太)が加わり、運命の歯車が軋むように動き始めるのです。
出てくるキーワードは、虐待、失踪、ニセ札、拉致、誘拐、身代金、偽装、二重生活などなど、わりと物騒なものが多いのですが、それぞれの人物の根底に有るのは、ささやかな幸せを渇望し、なくしてしまった物を追い求める切なる思いです。
逆境の中で密やかに生きてきた登場人物たちが訥々と語るセリフの端々が、ふとした時に見る者の心に刺さり、あるいは染みていきます。中でも、広瀬さんの低めのトーンでの台詞回しが効果的に感じます。
寂しい人たちが、欠けたピースを埋めるように寄り添っていく姿には、そこにもささやかな幸せが生まれているようにも見えるのですが、失くしたものが大きくて、それに気づかないのが痛ましくもいじらしい。
彼らにとっての幸せの青い鳥はどこにいるのでしょう。私には、そんなに遠くない場所に思えるのですが。
※元記事:コラム「さっちゃんはね、テレビが大好きホントだよ♪」(テレビる毎日公式メルマガ[週刊・テレビる毎日]第881号)
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