8May
かのヴォーヴォアール女史は「人は女に生まれるのではない、女になるのだ」と仰いましたが、恥ずかしながらワタクシなぞは、女に生まれたことの上に漫然と居座っていて、女を磨くことの努力をすっかりサボっちゃった人種だと申せましょう。女史がのたまったのとは別の意味での「女になる」ことを怠ってしまっております。
城之内純(桐谷美玲)は、幼い頃から、女の子らしいキラキラ・ヒラヒラものに馴染めず成長した理系女子。
製紙会社の研究員に就職すると、朝は西の郊外のラボへ出勤し、夕方には東へと帰宅する、明るい太陽に背を向け続ける日々を送るネガティブ・リケジョに。
ところが勤務先の部署が、大手化粧品会社に吸収される事となり、職場も華やかな丸の内へ変わることになる。同僚の前田満子(水川あさみ)、佐藤聖良(ブルゾンちえみ)とともに、華やかで美しい職場の女子社員に圧倒されていると、新しい上司の国木田(鈴木浩介)から、化粧品会社の社員として、見た目を磨くべきだと諭される。
自分達が成長の段階で進化しそこねた「女子モドキ」だと自覚した3人は、オシャレ女子に転生するための方程式を探すべく、ビューティに関する研究を始める。
キラキラしたことも、ましてや恋をしたことも、恋に憧れたことすらない地味女子を演じるのが、「世界で最も美しい顔100傑」に選出されるほどの美女である桐谷さんだっていうのが、なんだかしゃくな現実なんですが、あえてその桐谷さんを、とことんネガティブで、卑屈なまでに恋に不器用なキャラクターに仕立てて、コメディエンヌとして扱っているのが、贅沢なコメディだとも言えるのでしょうか。
コメディエンヌといえば、話題なのが、今年に入ってから大ブレイク中の芸人、ブルゾンちえみさんが同僚役で出演しています。おなじみのネタでは自信に満ちたキャリアウーマンを演じていますが、ドラマではそのデフォルメを削ぎ落として、見事に溶け込んでいます。
オシャレ女子たちが単純に「キレイ、カワイイ、ステキ」と見るものを、理系女子たちは「なぜ?どこが?そんな法律でもあるの!?」と、明確な理由を求めて考察しがち。感性やセンスに訴えるビューティのジャンルに対して、がっちりと揺るがない根拠をもとめて研究するものだから、なんだか的外れになっていく可笑しみがあります。
また、恋愛に全く免疫のなかった純が恋をしたことで、自分の気持ちに対応できなくなっていくところも、コメディとして楽しめます。
ですが、恋をしたことで無意識のうちに内側からにじみ出る女子らしさや、アドバイスを得てビューティ研究が成功した際に生まれる自信や充足感で、確実に女子モドキから脱却していくヒロイン達の姿に、密かに、いやさ盛大なる声援を送りたくなります。
※元記事:コラム「さっちゃんはね、テレビが大好きホントだよ♪」(テレビる毎日公式メルマガ[週刊・テレビる毎日]第842号)
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