2May
近頃の世間では何やら、人の言葉尻を捕まえてはいちゃもんをつける傾向が多いように見受けられ、一部では「不謹慎狩り」などと言われたりするそうです。それと似て非なるものかは分かりませんが、他人に対して不用意に「頑張れ」ということはタブーなのだという風潮も、なぜだか常識化しつつあります。
「頑張れ」の言葉そのものがプレッシャーとストレスに感じてしまう人が少なくないからなのですが、TBS「重版出来!」は、「頑張れと言われると嬉しくて、頑張ろう!と思える」と語る、体育会系の女性がヒロインのドラマです。
黒沢心(黒木華)は、大学までずっと柔道一筋の青春を送って来て、オリンピックの日本代表候補にもなったが、ケガのため選手としての道を断念、出版社・興都館に入社して、週刊コミック誌「バイブス」編集者に配属される。
コミック誌を希望した理由は、柔道の稽古で辛い時にマンガで励まされたこと、外国選手とでさえマンガを通じて共感し合えることの素晴らしさに、自分の情熱を注ぎこめる場所だと確信したからだった。
デスクの五百旗頭(オダギリジョー)について、ベテラン漫画家・三蔵山(小日向文世)宅に挨拶に行き、その作品や仕事に対する意識に感銘を受ける心だったが、数日後その三蔵山が突然、編集部あてに現在提出済みの原稿をすべて引き揚げると、絶筆を告げる連絡をしてくる。
週刊誌の編集部は連日が締め切りとの戦い。その中でも作品のクオリティを保ち、人気の向上を使命づけられ、その試練を克服して入稿・印刷・発行を迎えると、すぐに次の締め切りが待ち構えているという容赦ない世界。漫画家、編集者、営業マン、書店員、そして読者…それぞれの「ひと」の絆が繋がることで、ヒット作が生まれます。
初版が品切れになり再版がかけられることを「重版出来(じゅうはんしゅったい)」と呼び、ヒットの代名詞として認知されているのです。(出版業界人以外でこれを「じゅうばんでき」と読んでいた人、9割以上なのでは。)
主人公・心を演じる黒木華さんは、今までのイメージでは「おとなしい」「地味」「控えめ」といったものが多かったので、キャスト発表時には、体育会系女子とは真逆なのでは?という印象だったのですが、ドラマを見て、つまりは「ひたむき」「一途」「芯の強さ」など、本質の部分では遠からぬものを秘めているのだと思えました。
「天皇の料理番」の俊子が真っ直ぐに篤蔵を愛したように、心のマンガ愛もやはりブレません。柔道で組み手をするように、仕事に正対していく心の姿に、これは出版業界を舞台にしながらも、これはスポ根ドラマなのかも、と思えてなりません。
※元記事:コラム「さっちゃんはね、テレビが大好きホントだよ♪」(テレビる毎日公式メルマガ[週刊・テレビる毎日]第790号)
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