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テレまめ

零れ落ちる掌の砂【大恋愛】

かつて「イケメンは正義」などという迷言を吐いたこともある私ですが、世の中がイケメンだけで構成されていたとしたら、それはそれで気味の悪い世界であると思われます。そもそも正義だけの世界っつーのも気味が悪い。そうでないから、今日もドラマが面白い。そういうことです。

各局の秋ドラマのラインナップを見ていた時に「TBSの金曜ドラマは恋愛モノか…主演は、戸田恵梨香と松岡昌宏…ではなくてムロツヨシ!?」と知るなり、自分の中の予約1位に躍り出たのが「大恋愛〜僕を忘れる君と」です。

北澤尚(戸田)は親の代からの開業医。見合い相手の精神科医・井原侑市(松岡)との結婚を間近に控えている。尚には以前から、内容を暗記するほどに大好きな小説があったが、結婚後の新居に引越してすぐに、上階からの水漏れでその本が水浸しになる。

その際ちょうど居合わせた引越し業者に上階の住人と交渉してもらい、そのお礼として食事をおごることに。意気投合して話し合ううちに、彼こそが大好きな小説の作者・間宮真司(ムロ)であることが判明し、尚は急速に真司を好きになってしまう。侑市に婚約破棄を申し入れた尚の周辺が騒然となる中、ふいに尚の記憶力が混濁し始める。

物語は、尚が若年性アルツハイマーに冒されて徐々に記憶を失くしていく、10年に渡るドラマ。そんな相手を変わらず愛し続けて行くという、究極の恋愛が描かれ、見るものに問いかけるというものです。

ムロさんが、かつては気鋭の小説家で、今は引越し屋のバイトの冴えない40男、でも愛情に背かない誠実な男性で、恋愛モノの主役として堂々たる存在感です。そして松岡さんが、心を残しつつも別れた尚の主治医としてムロさんと対峙する場面が、対比的であり、絵になります。

テーマとしては、楽天的に捉える訳には行かないのに、具体的な打開策が少ない現状という重く辛いものです。それを愛と思いやりで労ろうとする真司、病に追いつかれながらも生き急ごうとする尚の二人の姿が、哀しくも愛しいと思えます。

今後の展開はまだわかりませんが、タイトルバックで、白い砂浜で二人が白い衣装に身を包み、尚があどけない表情ですくい上げた砂が掌からこぼれ落ちるのを、真司が手で受け止め、そして二人で手をつないで歩いていくといった映像が流れるたびに、この先の切ないストーリーが垣間見えるようで、しみじみとしてしまいます。

返礼を求めない無上の愛の物語。ムロさんの飄々としたキャラだからこそ、思いの深さと意志の強さが際立って迫ってくるように思えます。

※元記事:コラム「さっちゃんはね、テレビが大好きホントだよ♪」(テレビる毎日公式メルマガ[週刊・テレビる毎日]第918号)

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