13Aug
医療ドラマは、命の現場という感動の最前線であるとともに、様々な問題を突きつけられる現場を描き、深く考えさせられることの多いジャンルです。フジ「グッド・ドクター」は、小児科を舞台に、自閉症スペクトラム障がい者が医師になるという今までにないドラマです。
東郷記念病院の院長(柄本明)は、小児外科に新たなレジデントとして新堂湊(山崎賢人※)を迎えると発表する。湊は学校の成績は主席だが、自閉症スペクトラム障がいを持っている人物。
小児外科長の間宮(戸次重幸)や主任の高山(藤木直人)は困惑を隠せないが、院長は、湊は並外れた記憶力のサヴァン症候群であり、試用中に問題があれば院長が責任を負うとまで発言する。
間宮に湊の指導係を押し付けられた夏美(上野樹里)は、忖度のない湊の言動に戸惑うが、その純粋さに触れるにつけ、無下にもできない。
一方で、病院の経営状態は思わしくないのだが、理事長の美智(中村ゆり)は恋人である高山のことを思うと、採算の悪い小児外科の廃止に踏み切れない。副院長の猪口(板尾創路)は、穏やかな表情の下で、院長を追い落とす策略を巡らすなど、医療とは別の陰謀と思惑が渦巻いていた。
障がい者が職業に就くことを阻害するのは差別になりますが、その職業の内容によっては、やはり様々な不都合が付いて回ると言わざるを得ません。今回のテーマは、見る者をそのジレンマに巻き込んで行きます。
自らの弟が自閉症であった高山が、過去の失敗の経験から、湊を画像診断科に転科させて、湊の能力を最大限に活用しようとします。
客観的に見ると良い手段に思えますが、湊が医師を志望した理由は「すべての子供が大人になれるように」するためなので、小児医療の現場でこそその能力が発揮され、何より彼の障がいの特性がそういった折衷案を受け入れないことで、大いに悩ましい現実が立ちはだかることになります。
もし実際にこういった医師が存在したら…?想像だにできないこの仮説、ドラマとして見るには興味深いテーマで、つい入り込んで見てしまいます。それに応えるように、山崎さん、上野さん、そして子役たちの演技が光っています。
サヴァンの優れた能力、しかしコミュニケーションが困難だという症状。あるいは純粋に子供たちを助けたいという無垢な想いと病院経営の実権掌握というきな臭い思惑。病院の表や裏で、相反する現実問題が蠢いています。
※崎のつくり上部が立(下の横棒なし)
※元記事:コラム「さっちゃんはね、テレビが大好きホントだよ♪」(テレビる毎日公式メルマガ[週刊・テレビる毎日]第907号)
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