8Feb
新しいドラマを見る時、好きな俳優さんが出ているから、脚本家や原作のファンだからという具体的な理由のほかに、漠然と「面白そうだから」という理由も確かに存在します。その「面白そう」には、コメディーに対する面白さとは真逆に位置する、「なんだかひたすらに暗くてドロドロしていそう」な内容に対して向けられる場合も確かにあります。
TBS「わたしを離さないで」は、番組の開始前に公開されたヴィジュアルが、主演の綾瀬はるかさん、三浦春馬さん、水川あさみさんが無表情で佇むモノクロのスリーショット。何だかこれだけで「怖!」と言ってしまいそうな雰囲気満載で、それだけに惹きつけるものも強く感じられました。無表情とはいっても、その中にも「虚無」「感情の放棄」それでいて「一縷の自我」などが綯い交ぜになったような複雑なものが見え隠れしているような気もするのです。
恭子(綾瀬)、友彦(三浦)、美和(水川)たちは、高い塀に囲まれた「陽光学苑」という寄宿学校で暮らしながら成長した。この学校に、外部から新任教師の龍子(伊藤歩)が赴任してくる。独特の価値観を教え込まれ、芸術作品の制作と評価が重視され、頻繁な健康診断が義務付けられた子供たちの生活に違和感を覚える龍子だった。事実、純真でおとなしく見える子供たちの中にも、歪みやねじれが存在していた。
絵の評価が低いことで人格を否定されて虐められる友彦、先生のお気に入りとして特別な存在になりたい美和など、狭い空間に押し込まれた子供たちを思いやった龍子は、「世界はもっと広い」と子供たちに教える。
幼いころから、塀の外には殺人鬼がいて、外に出ると殺されると教えられていた子供たちは、龍子の言葉によって初めて外界への興味を持ち始め、それに気づいた校長(麻生祐未)たちは危機感を抱き始める。
ある日講堂に集められた子供たちは、校長からある事実を告げられる。
「あなたたちには、生まれながらの使命がある。それは『提供』というもの。誰かの役に立つために生れてきたあなたたちは、いわば『天使』なのだ」
とー。
「提供」すなわちそれは、「臓器提供」。子供たちは将来、移植する臓器を提供するために育てられたクローンで、そのために個人の楽しみや希望を極力持たずに、ひたすら従順に洗脳された仔羊たちという訳です。言い方は悪いですが、学苑は「牧場」ということです。
いやあ、もう設定が怖い怖い。そんでもって校長先生の淡々とした態度と、時折豹変する裏の顔が怖い。死を前提することで浮かび上がる「生」を強く深く考えさせられる、文字通りの問題ですね。
原作は日系英国人のカズオ・イシグロの小説で、過去に映画化もされています。また、マイケル・ベイ監督の「アイランド」や、ナイト・シャマラン監督の「ヴィレッジ」という映画とも通じる部分があるので、合わせて見てみるのも面白いかもしれませんね。
あくまで架空の世界のお話ではありますが、もしも闇の社会でこんな事が起きていると考えたら、ホラー以上に怖い世界ではありますね。
※元記事:コラム「さっちゃんはね、テレビが大好きホントだよ♪」(テレビる毎日公式メルマガ[週刊・テレビる毎日]第778号)
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