29Aug
「パイロット版」というのをご存知だろうか?簡単に説明すると「実験作」のことだ。TV製作プロダクションなどが、製作サイドの技術実験や放送局への宣伝用に作る作品がそれに当たる。新人の漫画家が出版社へ直に原稿を持ち込んで売り込みをかけるのと似たようなもので、出来が良ければ仕事依頼も来るし、ある意味重要な作品なのである。
このパイロット版の宝庫なのがピー・プロだ。特撮で『マグマ大使』『スペクトルマン』『快傑ライオン丸』、アニメで『ハリスの旋風』『0戦はやと』等の作品を残した老舗である。現在ではその会社活動も何をしているのか全く不明だが、かつては大手の円谷プロや東映といった大会社と争っていた兵なのだ。そんな会社の作ったパイロット版が今でも視聴可能なのは嬉しい限り。(ただしリリースしているのは他社で、かつては東映も発売していた)
しかもこれがまたぶっ飛んだ内容で、いろんな意味で面白い。
まず『マグマ大使』パイロット版。「私がゴアだ」でおなじみの敵・ゴアはここでも変わらないが、マグマ大使本人が凄いの何の。……何が凄いって、顔がマスクじゃなくて役者の顔に金塗りを施しただけなのだ!どう見てもそのまんまなのを堂々と見せているところには、失笑どころか言葉を失うこと確実だ。
次にパイロット版のみの登場で終わった『豹(ジャガー)マン』。元は等身大のヒーローだが、巨大化も出来る。まあそれはいいが、出てくる怪獣の泣き声というのがどう聴いてもゴジラやラドンのそれだったりする。どう考えても無断使用だ!パイロット版に著作権は無いのか?
これもパイロット版だけの『豹(ひょう)マン』。名前が上のと一緒なのは気にしない気にしない。今度は豹の姿をした等身大ヒーローで、悪のマントル帝国に立ち向かうべくある科学者が自らを人体実験の被験者にして誕生したものだ。
実験で変身するシーンの特殊メイクはかなりよく出来ているのだが、肝心のヒーローはどうなったかというと、豹の跳躍力、刃物のように切れるマント、そしてヒゲ針!……なんか強そうに見えないところがかえって斬新である。
今ではパイロット版自体も作られなくなった。まだ映像技術が確立されておらず、発展途上だった頃の時代を振り返るのも一考かと思う。意外な発見があるかもしれない。まあ、笑ってしまう方が先かもしれないが……。
(文・荒馬大介)
※本記事はテレビる毎日公式メルマガ「週刊・テレビる毎日」のバックナンバーの中から、こざるが厳選した荒馬大介さんのコラムをブログ用に再編集したものです。掲載の年月日と号数は省略します。
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